2024年 北嶺中学校 理科(1)

2024年度 北嶺中学校 理科 分析と解説(大問1~2)

本年度入試では、例年通り大問は4問、小問総数は前年と同じ27問(2022年度は24問、2023年度は27問)でした。

日常生活にかかわりのある事象・現象や、環境問題、時事問題などをもとに出題され、小学校の学習範囲にとどまらない高度な内容が含まれています。

特に本年度は計算を必要とする問題が、物理・化学・生物の各分野で出題され、全体の37%(27問中10問)を占めました。例年もそうですが、理科のみならず算数・数学の力も、得点に大きくかかわってきます。

 

2024年度の出題内容は次の通りです。

大問1 (地学分野:天体、気象、地質) 解説はこちら

(1) 「熱帯低気圧」の呼び名
(2) 三大流星群
(3) 地下資源
(4) 潮の満ち干
(5) 月の満ち欠け(太陽・月・地球の位置関係)
(6) 雲の発生

大問2 (物理分野:てこ、ふりこ、豆電球の明るさと電流の大きさ、音) 解説はこちら

(1) ノーベル物理学賞について
(2) 光と色(光の三原色)
(3) ばねの伸び、浮力
(4) 音の速さ

大問3 (生物分野:呼吸、赤血球のはたらき) 解説はこちら

(1) ヘモグロビンの組成
(2) 他の生き物の血液
(3) ヘモグロビンが運搬する酸素の量
(4) 細胞内でのエネルギー発生
(5) いろいろな生物の呼吸器官
(6) 呼気・吸気の成分

大問4 (化学分野:アルコールの燃焼) 解説はこちら

(1) アルコール発酵をする生物
(2) エタノールの原料
(3) 化石燃料の燃焼(カーボンニュートラルの考え)
(4) エタノールの化学構造
(5) 燃焼による熱量の計算

 

◎大問1

(1)

海水温が高い熱帯や亜熱帯の海上では、海水からエネルギーを得て「熱帯低気圧」が発生、発達することが有ります。この熱帯低気圧は、その発生海域により下の表のように呼び名が変わり、うずを巻く向きも違ってきます。

なお、台風・ハリケーン・サイクロンの発生海域をまたぐ熱帯低気圧もありますが、このときは存在する場所によって呼び名を決定します。

名称 発生海域
台風/タイフーン 北西太平洋
ハリケーン 北東太平洋、大西洋(カリブ海、メキシコ湾)
サイクロン インド洋(ベンガル湾)、南太平洋

※ 昨年(2023年)の大問1(4)③ではサイクロンの風向に関する問いが出題されました。

\(\underline{\rm{答. ①\cdotsハリケーン、②\cdotsサイクロン}}\)

 

(2)

宇宙空間を漂う小さな物質が、地球の大気に突入し、高温になって輝いて見えるのが流星です。この流星のもととなる小さな物質は、太陽の周りを公転していることが多く、その軌道が地球の公転機道と交わる付近では毎年ほぼ同じ時期に流星が多く見られます。

これが流星群とよばれるもので、1月に見られる「しぶんぎ座流星群」、8月に見られる「ペルセウス座流星群」、12月に見られる「ふたご座流星群」を「三大流星群」とよんでいます。

\(\underline{\rm{答. ア}}\)

 

(3)

人間にとって有用な資源となる鉱物を含んでいる岩石を鉱石といいます。鉄を多く含む「鉄鉱石」、銅を多く含む「銅鉱石」などが有名ですが、アルミニウムの原料となる鉱石は「ボーキサイト」とよばれます。なお、「鉱物」、「鉱石」、「岩石」の違いは次のようになります。

・鉱物…地球や惑星をつくる物質で、地質活動などで自然にできた固体。

・岩石…鉱物が集まってできたもの。

・鉱石…鉱物や岩石のうち、特に人の生活に役立つもの。

\(\underline{\rm{答. エ}}\)

 

(4)

地球上のすべての物体には、地球がその中心に向かって引く力(「引力」)がはたらいています。この引力は、太陽や月なども持っていますが、太陽は遠く離れているので、地球上の海水はおもに月の引力の影響を受けています。

すなわち、地球上の海水は、月がある側では月の引力で引き上げられ高くなり、その反対側では月との距離が遠いため引力が弱まり海面が高くなるのです。地球は一日に1回自転しているので、その影響により、地球上の海水は一日に2回干満を繰り返します。

\(\underline{\rm{答. イ}}\)

 

 

(5)

① イのように、太陽・地球・月の順にならぶと、地球の夜の部分から太陽の光を反射している月がまん丸に見えます。

\(\underline{\rm{答. イ}}\)

② アのように、太陽・月・地球の順にならぶと、地球の昼の部分から月を見ることになる(夜は月が出ていない)ので、月は見えません。

\(\underline{\rm{答. ア}}\)

 

 

(6)

雲は、

① 空気が上昇すると気圧が下がり膨張する。

② 空気は膨張すると温度が下がる。

③ 空気の温度が下がると、水蒸気が小さな水滴や氷滴になる。

のようにしてできます。

雲をつくる水滴や氷滴は直径が0.01~0.02mmととても小さいので、空気中を漂っています。

\(\underline{\rm{答. カ}}\)

 

 

 

◎大問2

(1)

2023年のノーベル物理学賞には「アト秒」(1アト秒=100京分の1秒)というきわめて短い時間だけ光を出す実験的な手法を開発し、電子の動きを観察する新たな研究を可能にした、欧米の大学の研究者3人が選ばれました。

\(\underline{\rm{答. オ}}\)

 

 

(2)

割合を変えて混ぜれば、すべての色を表すことができる基本となる三つの色を「三原色」といいます。 ふつう、赤・緑・青の「光の三原色」をこのようによびますが、絵画の絵の具や印刷インキの混合では、昔から赤・黄・青を「色の三原色」とよんできました。

\(\underline{\rm{答. イ、ウ、カ}}\)

 

 

(3)

問題文にあるように、液体中の物体の重さは、その物体が押しのけた液体の重さの分だけ重さが軽くなります。この液体中で受ける上向きの力を「浮力」とよびます。

この直方体の体積は\(1\times1\times3=3\rm{(cm^3)}\)なので、このエタノール中で受ける浮力は\(0.8\times3=2.4\rm{(g)}\)です。したがって、浮力を受ける前の重さは2.1+2.4=4.5(g)となります。

\(\underline{\rm{答. 4.5g}}\)

この物体は高さが3㎝で、水面下2㎝のところにあるので、引き上げ初めから2cmまでは重さは変わりません。

その後、物体が液面に達し、液面より3㎝上に引き上げられるまでじょじょに重さは増え、3㎝ちょうどで全部液面より上に出るので、重さは4.5gになります。

これをグラフに表すと右のようになります。

 

 

(4)

音が聞こえている時間を考えるのですから、A地点で音を発し始めたとき(=0秒後)から音を止める3秒後で、 B、Cそれぞれの地点で、音が聞こえ始めるときと、音が聞こえなくなるときを考えます。

風の影響で、Bに向かう音の速さは秒速340-6=334(m)、Cに向かう音の速さは秒速340+6=346(m)であること、音を止めるのはAから10×3=30(m)北に寄った地点であること、また、答は3秒より長いか短いかを問われているので、いちいち計算はせずに式で考えることに注意しましょう。

・音を発し始めた0秒後の音がB、Cで聞こえるとき

BもCもAから1020m離れているから、

Bでは(1020÷334)秒後に音が聞こえ始め、Cでは(1020÷346)秒後に音が聞こえ始めます。

・音を止める3秒後の音がB、Cで聞こえるとき

Bではスピーカーが30m北に寄っているので、{(1020-30)÷334}秒後に音が聞こえます。

Cではスピーカーが30m遠ざかっているので、{(1020+30)÷346}秒後に音が聞こえます。

上記の2つから

Bでは、音がAで発せられてから1020÷334(秒)遅れてとどき、音を止めてから(1020-30)÷334(秒)後まで聞こえます。

Cでは、音がAで発せられてから1020÷346(秒)遅れてとどき、音を止めてから(1020+30)÷346(秒)後まで聞こえます。

したがって、Bで音が聞こえている時間は{3+(1020-30)÷334-1020÷334}から3秒より短いことが分かり。Cで音が聞こえている時間は{3+(1020+30)÷346-1020÷346}から3秒より長いことがわかります。

\(\underline{\rm{答. キ}}\)

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